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2006年3月12日 (日)

城壁と扉と騎士の物語[vol.3]

 

 

前回のつづきです…

 

 

 

* * *
 
 
 
 
 
 
 
  すると

 

突然の突風が 彼に襲いかかった

 

それは一瞬にして 重い鎧を身につけた彼を 軽々ともちあげて

 

それは それは すさまじい スピードで

 

彼を もと来た道へ うしろへ と 吹き飛ばす

 

うしろへ かこへと 連れ去ってゆく

 

 

 

騎士は なんとか 抵抗しようとするが

 

風は 瞳には 捕えられず

抗おうにも 姿が つかめない

 

手足をばたつかせてみたところで

 

 

大地は はるか 下

 

 

彼は とつぜんの 風によって 心を 乱す

 

 

 

 

 

目の前に 射したと思った 光が

 

急速に 失われていく。

 

 

 

未だ見ぬ いばらの 先を

 

まだ得ぬ 砂漠の 苦難の道を

 

 

それすら 見ることさえ 赦されぬのか?

 

 

 

騎士は 諦めの心で なにひとつ 抵抗できず

 

 

焦燥もそのままに 絶望の過去へと 飛ばされていった。

 

 

 

 

 

 

すると

 

 

ふあっと

 

 

彼は 何かに 抱き止められる。

 

 

大地に足がついたのに気づいて 騎士は 恐る恐る 目を開ける

 

 

そこは、 鋼鉄の扉の前だった。

 

それは 見覚えにあたらしい 美しい 庭の はじまる 場所

 

 

 

彼は 慎重に 辺りを 見渡して

 

その場が かつて 開けた扉ではなく

 

つい最近 開けたばかりの 新しい扉であると 確信する

 

 

 

一体 あらがえぬ風に連れ去られた自分を

 

助けた者とは 誰だろう

 

もう二度ともどりたくないと 祈った場所から

 

救い出してくれたのは

 

なんであったのだろうか

 

 

 

 

 

 

それは きっと この鋼鉄の壁なのだろう。

 

 

と 彼は その壁を 見上げる

 

 

 

遙か頭上 雲の彼方まで そびえる それは

 

 

騎士を 過去へと連れ去ろうともくろんだ

 

意地悪な風を 通すことを 拒んだのだろう。

 

 

 

気まぐれな その 運命の 風は

 

鋼鉄の 固い 壁に ぶつかって 霧散した

 

 

 

そうして されるがままの 絶望の 自分を 

 

母のような やさしさで つつみこみ

 

この はじまりの 場所へと 降ろしたのだろう。

 

 

 

 

そう ここは はじまりの 場所

 

 

この扉を 開けるために あの 黄金の鍵を 手にするまでに

 

一体自分は どれほどの 苦難を 乗り越えて 来たのだったろうか

 

 

 

彼は かつて 敵 であった その 壁に

 

かつては 目標でもあった その 扉に

 

庭にそよぐ 優しい風と 陽のぬくもりを 感じながら

 

そっと 壁に背中をあずけて 座り込む

 

 

 

そして ふっと 安堵の 笑みを もらして

 

その壁に 感謝 する

 

 

そして また 知る

 

 

少しずつだが だが 確実に

 

つよく なるのだ

 

ひとは 自分は

 

 

そして かつては 難攻不落であった その壁が

 

にっくき 敵であった その壁が

 

守ってくれるのだ 自分を ひとを…

 

 

二度と もどる 必要のない 絶望の 過去から。

 

 

 

 

なんて 世界は 寛大 なのだろう!

 

 

 

なんて 生命とは 慈悲深いのだろう!

 

 

 

 

勇敢な騎士は 母を思い 父を想い 友を思い

 

数々と 乗り越えてきた 苦難の道を 思い

 

あたたかな 涙を ひとつぶ こぼした。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

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