深い森の長い道
深い森の長い道
気づいたときには 濃い水分を含んだ 重たい空気に包囲されていた
息苦しくて逃げ出したいのに 出口が見つからない
うすぐらい視界のよこで けものみちを見つけたが
そちらへ踏み込む度胸は なく
だから ひたすら
わずかに踏み固められた その道をゆく
ところどころぬかるんで 見えなくなりそうになるたび
不安にかられながらも なんとか歩み進めるその道に
いつか つぎにふみだす足先の一点しか 見えていないじぶんに気づく。
*
陽をさえぎるほどに 広く自由に葉を広げた 巨木たちが
うえのほうを吹き抜ける風に きもちよさげにさざめくのを
今更ながらに 目を見開いて
大きな日陰を這う自分の小ささにおどろいた
そこが 深い森であったこと
その道の先にあるのは 光燦々たる花園か
それとも 見知らぬ街のはじまりか
もしくは だた ひたすらの 道がつづくだけなのか
わからないが 気が急いて
また 歩みをはじめる
生き急ぐことを 必要と感じるのか
ただ 立ち止まる 勇気が無いだけか
ずっと考えながら いまも 歩き続けている。
*
だが それでも美しいと感じるならば そのとき心は すでにそこを離れて
時を刻む現実を蝕む 窮屈な法則を 悠々と見下ろしながら
あなたは 豊かな庭に遊んでいる
それでも愛しいと望むならば そのときこそ 心をぞんぶんに
そそいでやればいい
その微笑みを満たしてゆく 最善の方法で
ふりあおいで観てみれば その森には充分の
豊穣が横たわり
潤うには充分すぎる泉が流々と 多くの命を繋いでいる
だから 心のままに 選び取ればいい
そして 心のままに 知ればよい
それは ひとつのこたえであり はじまりなのだと
いくつもあった 道の中から
その道を選んだのだからと
光と闇の両方を抱いた その深い深い森は
悠然と時を刻みながら ただ あなたの選ぶ道を見守っている
無言のままに
だが まなざしだけは あたたかに。



最近のコメント